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海保が大型巡視船を増強!



国会で「自衛隊と警察・海上保安庁の諸君に敬意を表する」という発言とともに巻き起こったスタンディング・オベーションが問題だとかいう今日でありますが、その海上保安庁の予算で巡視船・巡視艇・測量船の増強が決まったという情報がありましたのでお伝えします。


こんばんは、くじら座元帥であります。


8月24日に閣議決定された平成28年度補正予算によると新規取得船艇15隻とジェット機1機の増強となり、国土交通省の外局的立場の肩身の狭い海上保安庁にとってはこれとない増強となった。
また、大型巡視船を含む船艇7隻とジェット機は老朽船の代替ではなく「増強」となるため劇的改善の道は遠いのではないかという観測が覆されたと言えよう。

海上保安庁が公開した資料によると・・・
6.500t級ヘリコプター搭載型大型巡視船 1隻
6.000t級ヘリコプター搭載型大型巡視船 1隻
3.500t級大型巡視船 1隻
180t型規制能力強化型巡視船 3隻
規制能力強化型巡視船 2隻

・・・が離島・遠方海域等における法執行能力の強化対策に当てられる船艇たちである。
保安庁の公式書面では見られないが、180t型と書いた巡視船は現在第11管区に所在する巡視船「のばる」の同型船とみられることから、当ブログではこれを「びざん型巡視船」の公式名称である「180t型規制能力強化型」としている。
またトン数を表記せず「規制能力強化型巡視船」としている船舶については、「平成27年度補正予算措置船の前倒し」と注釈が出ているもののまだ推測の域を出ず当方としても観測の仕様がつかめないため発表と同じ文章としているが、船価が2隻で18億円ということはある程度は推察できるがその後の正式発表を待ちたい。








6.500トン級はいわゆる「しきしま型大型巡視船」の3番船であることは間違いない。公開されたイメージ図には40mmと思しきボフォース単装機関砲や20mm遠隔操作型機銃などが見えるため、実質はあきつしまの2番船というかたちではあるがそれでも「幻の3番船」が復活するのは凄いことである

「幻の3番船」とはソマリアの海賊対策時に「あきつしま」との交代制で投入されようとしたもので、結局は海自がその任を預かることとなり3番船計画は立ち消えとなってしまった。

しきしま型のヘリ搭載数は2機でネームシップはスーパーピューマ332型「あきつしま」は225型をそれぞれ使用しているが、3番船は225型を1機のみ装備するようだ。
これは船価と搭載ヘリの購入額を足した取得費用を抑えたものだろうと推察される

しきしま型は世界最大の巡視船とされてきたが、それは中国のコーストガードにあたる海警2901型に奪われてしまった。
しかし海上保安庁にかかわらずハードとソフトの両方が備わってないと「世界最大の巡視船」という称号は手放せないだろう。
たとえ船体規模が大きくとも、卓越した高機能な性能を有する船と優秀・かつ訓練された乗組員がいなければ名実ともにとは行かないからだ。

しかし、代替なら分かるが増強というのが驚きだろう。
「しきしま」は平成4年の就役であることからすでに一般的な巡視船の船齢30年を目前に控えており、そろそろ「代替巡視船」として計画が上がってもいい頃合いだからである。



しきしま型の3番船の影に隠れてあんまり目立たないのは新規建造の6.000t級大型巡視船だ。


上の写真のイラストにも描かれているが(右)しきしま型より500t軽く、10m短いだけで満載も9.000tに近いぐらいの大きな船である。
見た感じは平成27年度予算の新型PLHの2番船かと思ったが、134mの27PLHよりも全長が長い新型船であることが分かる。
しかもしきしま型以外で初となるスーパーピューマ225型を2機装備する

特性は写真にもあるとおりだが、災害対応能力・捜索監視能力・指揮能力に加え災害時の帰宅困難者支援か輸送能力も付与されている。
本船は28PLH①と比べて90億円安い172億円であるが「規制能力」が本船にはない。
つまり災害に特化した巡視船であることがわかるが、28PLH①と比べても船体規模や搭載艇の数、40mm機関砲を除くとさほど差異が見受けられないがそれは規制能力分の差額というやつであろう。
進路規制等では主機や舵・スクリューなどに負荷がかかるためそれ相応の対策をした巡視船が投入されている。その分船価は高くなるが・・・

現在PLHは最大のしきしま型を筆頭にみずほ型・そうや・つがる型と続いている。その中でも最大勢力なのが「つがる型」で満載で4037tと「はつゆき型」並の排水量の船である
現在9隻が就役中でそのうち5隻が延命工事を施工されている
しかし6番船以降は今のところ予定は無いそうで、もしかすると28PLH②がつがる型の後継となりうる可能性も秘めていると言えよう。







3.500t級大型巡視船はヘリコプターの格納・搭載能力を持たないPL型である。
同じ3.500t級で横浜海上保安部を定係港にしている「PL-31 いず」より10m大きい巡視船である。
「いず」は阪神淡路大震災の教訓から「災害対応」船として計画され、物資の輸送能力や指揮能力に加え救難強化型巡視船でもあるため海底地形走査型ソナーやROVなども備える救難業務に特化した巡視船であるのだが…
28PLは「災害対応」はもちろんのことだが「捜索監視能力」と「規制能力」を備える「警備業務向け」の巡視船であることがわかる。

尖閣専従部隊の「旗艦」的役割のために建造されるのだろうか?
船体規模はいずより大きめだが、船橋直前とヘリ甲板直前に40mm単装機関砲が搭載される予定(海保提供のCG写真で確認)だということで、同型タイプながらも「いず」とは毛並みの異なる巡視船となりそうだ。



最後にもう一つ紹介したい。







海洋調査能力強化で大型測量船1隻が予算認可された。
総トン数4.000tはこれまでの測量船よりも大型で3.370tの拓洋・3.128tの昭洋よりも大型である。
また、全長も一番長い船で拓洋の98mであるのでこれも最大である。
測量船は海自の海洋観測艦と勘違いされやすいが海底地形の測量を行いわが国が領海や排他的経済水域の主権を主張するには海保の測量船あってこそである

しかしその測量船隊はかなりの老齢船揃いで、巡視船で現役最古参のしれとこ型の「PL120くにさき」といい勝負を繰り広げている。
銚子海上保安部のPL125「かとり」は今年の10月で退役するため、くにさきが現役最後となる。

測量船での最古参はHL-02拓洋で、1983年の就役である。
また解役が噂されるHL-04天洋は1986年。
2隻就役している明洋は1990年・海洋は1993年の就役である
一番新しいのが昭洋で1998年の就役と一番若くて20年近く、中型・大型測量船の高齢化は巡視船の差ではないことがわかる。







1993年就役の「海洋」 HL-05 常備排水量:1035t/総トン数550t

測量船はわが国が海洋国家として海洋主権を確保するに重要な枠割を果たすにも関わらず依然として代替船が登場することはあまりなかった。
事実、測量船の名前を見てもそのことが分かる。
最古参「拓洋」は2代目で初代は1957年就役 1983年に退役している

「天洋」も2代目で初代は1961年に就役している(水路測量船)

「明洋」は3代目だが初代は極洋捕鯨のキャッチャーボートで「第十五京丸」といい、1943年竣工・1956年に購入し測量船となった。
(明洋は伊豆諸島の明神礁付近で消息を絶った測量船「第五海洋丸」の後継)

明洋型の2番船海洋は「第五海洋丸」が初代であり、旧帝国海軍の200トン型海洋観測船の5番船であった

昭洋も2代目で初代は1972年就役 1998年退役している

このことからも分かるように測量船は大体30年ペースで建造がなされている
これが測量船の更新が少ない理由の一つとも言えようか。
実際予算的につぶしが利く船と考えられているようで、一時は最近改修工事を終えた拓洋の近代化改修予算も怪しかったぐらいである。
ただ、28年度補正では「既存測量船の高機能化」が18億円で盛り込まれているため解役が噂されている天洋に対して実施されるのかは今ひとつとして不透明ではある。

ところで問題点があるとすればそれは予算の付け方に問題があると思う。
海上保安庁の予算の大部分は「補正予算」という一つのドーピング的予算で運用している現実がある。
いかに国会内の審議が厳しかろうと、本予算に組み込めるほどのスキマがなかろうと、本予算の審議で喫緊(きっきん)な状態を問題提起しそこに予算を確保するのが筋であると思う。

ところが平成29年度予算概算要求を見てみると石垣港の拠点整備費や宮古島の拠点整備費・さらには小笠原諸島にも拠点を構える計画のようで、概算要求規模も大きくなりそうだ。
(小笠原は拠点確保のための調査費)
さらに平成30年就役船舶にも記載があり、
規制能力強化型巡視船が3隻
小型巡視船が1隻
大型巡視艇が4隻 とこちらは尖閣部隊と小笠原向けだろうが船舶の整備が盛り込まれていてやるべきことは一応は果たしているようだ。
平成29年度予算概算要求は28ページにも及ぶ厚みのあるものなので一度ダウンロードし印刷してみるといいかもしれない。

あとは人員育成だろうか。
どんなにいい船を造っても、優秀な人材が育たないのであればなんの意味もなさない。
何度でも言うが、海上保安庁は国土交通省の外局的立場である。
したがって予算を獲ってくるのは国交省であるため、あまり上手から攻めることもできない傾向があるようだ。
海自がイージス艦を取得するときに財務省に何年かかけてトクトクと説明を説いて魅せた例もあるが海保の場合は一枚余計な壁があるのかもしれない
しかし、海上保安庁の総額のうち人件費が半分以上(53%)を占めている現状を鑑みるとなかなか人員育成まで手がまわらないのだろうか?

それでも海保は世界的に見ても優秀な人材がいて、よく鍛錬された船艇で構成された海上警察組織であることを忘れないようにしてもらいたいと願う。





出典:
海上保安庁
平成27年度海上保安庁関係補正予算の概要

平成28年度海上保安庁関係予算決定概要

平成28年度海上保安庁関係第二次補正予算の概要

平成29年度海上保安庁関係予算概算要求概要

産経ニュース8月23日投稿「海上保安庁が過去最大の補正予算計上へ 大型巡視船3隻程度新造 尖閣事態受け全国的に増強

宮古毎日新聞社9月4日投稿「巡視船3隻を増強配備/宮古島海上保安署

会計検査院

海人社発行「世界の艦船」11月号No.848 16p「海上保安庁が新型船3隻を増強(カラーCG)」
110p「海上保安庁が大型船4隻を増強! その内容と背景」米田 堅持氏



この記事はこれらの方々の記事を参考に構成しています。
再編集:くじら座元帥
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